皆様、令和3年の冬頃に国税庁や各国税局から相続税の課税状況に関する発表があったことはご存じでしょうか。今回は、その内容を少し紹介するとともに、令和4年の春に行われた法改正による成年年齢の引下げに伴う相続税・贈与税における「未成年者控除」に関わる事柄を、一つのQ&Aを用いてお話ししていきます。ぜひ税における昨今の情勢や相続税の計算に影響する要点を押さえていきましょう。
全国の相続税の課税割合を2011年と2020年で比べてみると、前者が4.1に対して後者は8.8という2倍以上の推移になっています。これは、単にその2つの年で差があるというものではなく、10年単位で見ても年々増えているという傾向です。その数値がぐんと増えた段階としては2015年の税制改正が影響していると考えられます。ちなみに主要都市別で見てみると、東京、名古屋、大阪は2011年が5~6だったものが9~13となり、熊本、札幌、仙台が2011年の1から4に上がっているという内容になります。
国税局別 相続税の課税割合の推移(%) | ||||||||||
2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | |
全国 | 4.1 | 4.2 | 4.3 | 4.4 | 8 | 8.1 | 8.3 | 8.5 | 8.3 | 8.8 |
札幌 | 1.8 | 1.8 | 1.8 | 2 | 4 | 3.9 | 4.2 | 4.3 | 4.1 | 4.4 |
仙台 | 1.6 | 1.7 | 1.8 | 1.8 | 3.8 | 4 | 4.1 | 4.2 | 4.2 | 4.5 |
関東信越 | 3.9 | 3.8 | 3.8 | 3.9 | 7.4 | 7.5 | 7.8 | 7.8 | 7.7 | 8 |
東京 | 6.9 | 7.1 | 7.4 | 7.5 | 12.7 | 12.8 | 13.2 | 13.6 | 13.1 | 13.8 |
金沢 | 3.2 | 3.2 | 3.3 | 3.4 | 6.8 | 6.9 | 7.2 | 7.4 | 7.3 | 7.7 |
名古屋 | 5.9 | 5.9 | 5.9 | 6.1 | 11 | 11 | 11 | 11.3 | 11 | 11.4 |
大阪 | 4.5 | 4.5 | 4.6 | 4.8 | 8.2 | 8.4 | 8.7 | 8.9 | 8.5 | 9 |
広島 | 3.2 | 3.1 | 3.1 | 3.3 | 6.6 | 6.7 | 6.9 | 6.8 | 6.9 | 7.2 |
高松 | 3.1 | 3 | 3.1 | 3.1 | 6.2 | 6.4 | 6.5 | 6.7 | 6.8 | 6.9 |
福岡 | 2.3 | 2.2 | 2.3 | 2.4 | 4.6 | 4.7 | 5 | 5.1 | 5.1 | 5.5 |
熊本 | 1.7 | 1.7 | 1.8 | 1.8 | 3.3 | 3.6 | 3.7 | 3.9 | 3.9 | 4 |
沖縄 | 3.1 | 3.2 | 3.3 | 3.4 | 5.6 | 5.8 | 5.7 | 6.3 | 6.5 | 6.7 |
それでは、次は相続税と未成年者控除が絡む事柄を一つのQ&Aで見ていきましょう。
Question:
「相続人がまだ未成年の場合には、成年するまでの年数に応じた一定の金額が相続税から控除される『未成年者控除』があると把握しているが、令和4年の春に成年年齢が20歳ではなく18歳に引き下げられた。つまり、それによって控除にも何らかの影響があるのでは?」
法改正の下、成年年齢が引き下げられたことでは、様々な事柄に変更が生じており、それは今回のQuesutionに対しても、
Answer:「成年年齢の引下げに伴い『未成年者控除』に対する計算において、年齢と控除額の部分で改正された」という変化をもたらしています。
それではもう少し詳しく見ていきましょう。
そもそもこの控除に該当するのは、相続または遺贈によって財産を取得した未成年者(日本国籍保持者)となります。そして、令和4年3月までは20歳未満だったところが民法の改正によって18歳未満に引き下げられました。
控除額の計算方法は、令和4年1日以後の相続・遺贈から適用される形で「10万円×満18歳に達するまでの年数」、1年未満は切り上げる形となっています。
その上でお伝えした留意点としては、その対象者本人の相続税額に対し控除額が大きくなってしまい、引き切れない場合があることでしょうか。その際には、引き切れない部分は対象者の扶養義務者の相続額から差し引かれる形になります。この留意点の部分では、例えば孫養子で対象者に当たる場合や、既に未成年者控除の適用を受けたことのある場合では一定の控除額限度の計算があるため、詳しい内容についてはお問合せください。
贈与税に関しても、4月以前は「その年の1月1日において『20歳』以上」だったものとして、例えば相続時精算課税、住宅取得等資金の非課税等、贈与税の特例税率、事業承継税制などで変更点が生じています。
より詳細な情報については、当事務所にご連絡をいただくだけでなく、国税庁のホームページでも確認することができるので、ぜひご覧になってみてください。