HOME > TOPICS > 名義預金とは?知らないと損する名義預金の落とし穴と相続対策
名義預金という言葉をご存知でしょうか?
祖父母がかわいいお孫さんのために孫名義の預金口座を作ってコツコツ貯金する―
日本ではよく見られる光景です。
また、収入のない専業主婦(夫)が、配偶者の収入を自分名義の口座で管理しているケースもあるでしょう。
このように実際にお金を出した人と口座名義人が異なる預金を「名義預金」と言います。
普段の生活では特に問題になりませんが、相続が発生すると名義預金は故人(被相続人)の遺産とみなされて相続税の課税対象になります。
その存在に気づかずに相続税申告から漏れてしまうと、後の税務調査で指摘されてペナルティを受ける可能性があるため注意が必要です。
名義預金とは、預金口座の名義人と真の持ち主(資金提供者)が異なる預金のことです。
例えば、祖父母がお孫さん名義の口座に積み立てている預金や、無収入の妻が夫からの生活費を自分名義の口座で貯蓄している場合が典型です。口座名義こそ孫や妻になっていますが、実質的には預けた本人(祖父母や夫)の財産である点がミソです。
こうした名義預金自体は違法ではなく、生前に家族へお金を渡す一つの形ではあります。しかし、相続の場面では注意が必要です。相続税では財産の名義よりも「誰の資産か(真の所有者)」が重視されます。名義預金は名義と所有者が食い違っているため、名義人ではなく実際のお金の出し手の遺産とみなされるのです。その結果、「孫名義の預金だけど実質は祖父の財産」のようなケースでは、祖父の相続財産に含めて相続税が課税されます。
名義預金が問題視される最大の理由は、相続税の申告漏れが生じやすいことです。名義が自分以外になっている預金は、一見すると被相続人の財産に見えないため、うっかり申告から抜け落ちてしまうケースが少なくありません。しかし税務署はそこを見逃しません。相続税の調査において、被相続人や相続人名義の口座を徹底的に洗い、名義預金がないか目を光らせているので。
また、中には相続税を少しでも減らそうとして意図的に名義預金を利用するケースもあります。たとえば自分の財産を生前に子や孫名義の口座へ移し替え、「名義上は自分の財産を減らしておいて相続税を逃れよう」という考えです。当然ながら税法上は認められず、発覚すれば厳しい追及を受けます。名義預金は相続税の抜け穴に使われやすいため、税務当局も重点的に調査し、高い確率で指摘されるポイントと言えます。
こで気になるのが「名義預金に時効はあるのか?」という点でしょう。結論から言えば、名義預金には時効がありません。預金を名義人以外の人が実質的に管理していた期間が何年に及ぼうとも、相続が発生した時点でそれが被相続人の財産であれば相続税の対象になります。よく「贈与から○年経過すれば税務署に指摘されない」といった誤解がありますが、正式な贈与と認められていない名義預金には当てはまりません。相続税の世界では時間経過による免罪符はないと心得ておきましょう。
では、どのような場合に「これは名義預金だ」と判断されるのでしょうか。税務署が名義預金を疑う主なチェックポイントは次のとおりです。
以上のポイントに一つでも該当すれば、その預金は名義預金として相続財産にカウントされる可能性が高くなります。裏を返せば、名義人自身がそのお金を自分のものとして管理・処分でき、適切な贈与手続きを経ていることが確認できれば名義預金ではないと言えます。
万一、名義預金があるにもかかわらず相続税申告で報告しなかった場合、後日税務調査で指摘されると本来納めるべき税金に加えて追徴課税(ペナルティ)が科されます。ペナルティにはいくつか種類があり、悪質性や申告状況によって税率も異なります。主なものをまとめると、
ペナルティの種類 | 内容(税率の目安) |
---|---|
過少申告加算税 | 本来より少なく申告していた場合の追徴税。不足税額に対し約10%(大幅な漏れの場合15%)課税 |
無申告加算税 | 申告をしていなかった場合の追徴税。納付すべき税額に対し原則15%(自主的に申告すれば5%、指摘後だと20%まで加重)課税 |
重加算税 | 悪質な隠ぺい・仮装があった場合の最重い罰則。不足税額に対し35%(無申告の場合は40%)もの高率で課税 |
延滞税 | 納付が遅れた期間に応じてかかる利息的な税金。年利は期間や情状により変動(直近では年2.4%~8.7%程度) |
名義預金を申告せずに放置すると本来の相続税にさらに数十%ものペナルティが上乗せされるリスクがあります。特に、意図的に隠したと判断され重加算税まで科されると負担は非常に大きくなります。
も触れられているように、名義預金は「故意に課税逃れを図った」と疑われやすいため重加算税の対象になりやすいのです。
ペナルティを避けるにはどうすればよいでしょうか?
大切なのは、相続税の申告期限までに正直に申告することです。
もし名義預金がある場合は最初から相続財産に含めて申告すればペナルティはかかりません。
また、申告後に名義預金の存在に気付いた場合でも、税務調査が入る前に速やかに修正申告を行うことで重い罰則を回避できる可能性があります。とにかく「指摘される前に自主的に対応する」ことが肝心です。
名義預金が相続税の課税対象になるのは避けたいですが、事前に正しい対策を講じておけば名義預金とみなされるリスクを減らすことができます。被相続人が生前にできる主な対策を4つ挙げます。
子や孫の口座にお金を入れるときは、毎回きちんと贈与契約書を交わしておきましょう。贈与契約書があれば、「あげる意思」と「もらう意思」が双方にあったことを証明でき、後から税務署に「これはただ名義を借りただけではないか?」と疑われにくくなります。少額の贈与でも油断せず、誰から誰に・いつ・いくらを贈与したかを明記した書面を作成・保管しておくことが大切です。未成年の受贈者で署名が難しい場合は親権者が代筆しても問題ありません。
現金手渡しではなく銀行振込で贈与を行い、資金移動の客観的記録を残しましょう。銀行振込にすれば通帳記帳などで誰から誰にいつ振り込まれたか明確に残ります。税務調査では現金の動きに特に厳しく目が向けられますので、「○月○日に○○銀行から孫名義口座へ○万円振込」といった形で履歴を作っておくと安心です。
名義人である子や孫に口座を作ったなら、その通帳や印鑑は速やかに本人に預けて管理させるようにします。名義人自身が自由に使える状況になっていないと、本当の所有者とは認められません。「使い込んでしまうかも…」と心配になる気持ちもわかりますが、もし未成年で心配なら引き出し制限のある定期預金や学資保険を活用する方法もあります。いずれにせよ、名義だけ借りて中身は自分で管理するような状態は避けてください。
贈与した財産の額が年間110万円を超える場合は忘れずに贈与税申告と納税を行いましょう。贈与税の申告・納付自体が「確かに贈与が行われた」ことを示す有力な証拠になります。非課税枠内の贈与であっても、名義預金と疑われないためにあえて申告書を提出する方もいます。それほど税務署にとって“贈与税申告書が提出されているか”は名義預金か否かを判断する重要材料なのです。
名義預金は、一見家族のためによいことをしているように思えても、相続の場面では大きな落とし穴になり得ます。名義預金=名義だけ借りた預金は、たとえ善意でも相続税の対象となり、発覚すれば重いペナルティが科される可能性があることを押さえておきましょう。もっともシンプルな解決策は、やはり生前贈与するなら正式な手続きを踏むことに尽きます。契約書を作り、必要に応じて贈与税申告まで済ませておけば、その財産は法的に受贈者のものとなり名義預金と判断されることはありません。
また、自分名義の財産についても出所が説明できる記録を残しておくなど、身の回りの金銭関係を整理しておくと安心です。家族間でお金をやり取りする際は「後から税務署に説明できる形」にしておくことが信頼と安心につながります。
もし「もしかして名義預金かも?」と不安な預金がある場合は、早めに当センターにご相談くださいませ。プロの視点で適切な対処法や節税策のアドバイスを受けることで、将来の相続に向けた不安が解消されるはずです。
相続税対策・申告のご相談を承っていますので、お気軽にお問い合わせください。正しい知識と専門家のサポートによって、名義預金の不安を取り除き、円満で安心できる相続を迎えましょう。