相続税がかかるかどうか、
基礎控除額をいくらで計算すべきか、
そして誰を相続人として数えるのか―
この疑問を4つのQ&Aから、「相続税の壁」の仕組みと家族人数で変わる非課税ライン、相続人の範囲を決める民法のルール、養子・放棄・代襲などで人数が揺れるケースまで順を追ってひも解きます。
「基礎控除額を超えた瞬間に相続税が発生するライン」のことで、具体的には 3,000 万円 + 600 万円 × 法定相続人の人数 を計算した値が“壁”になります。
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基礎控除額とは、亡くなった人の遺産総額から債務や葬儀費用などを差し引いた「正味の財産」が、この金額までは非課税になる“相続税のスタートライン”です。 |
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基礎控除額は、法定相続人の数で決まります。
| 法定相続人の人数 | 基礎控除額(= 3,000 万円+600 万円×人数) |
|---|---|
| 1人 | 3,600 万円 |
| 2人 | 4,200 万円 |
| 3人 | 4,800 万円 |
| 4人 | 5,400 万円 |
| 5人 | 6,000 万円 |
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数え方で迷いやすいポイントで、
・相続放棄した人も人数に含める(控除枠は減らない)。 例として、配偶者と子2人(計3人)の家庭なら基礎控除額は4,800万円。遺産を評価した結果が4,800万円以内なら相続税は不要ですが、4,900万円なら超過した100万円に課税されます。逆に、5000万円の遺産でも配偶者が全額を受け取れば配偶者控除により税額ゼロにできるケースもあるため、人数だけでなく控除・特例の活用も合わせて確認することが大切です。 |
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●遺産分割協議と名義変更
相続税がかからなくても、不動産や預金は名義が亡くなった人のままでは売却も解約もできません。放置すれば、2024年から義務化された相続登記の期限(取得を知った日から3年以内)を超えて過料が科されるおそれもあります。ですから、
① 相続人全員で遺産分割協議書を作成・署名押印
② その協議書を添付して不動産の相続登記、預金口座の解約払戻し
を速やかに行うことが不可欠です。
●二次相続リスク
配偶者が遺産をすべて受け取れば今回の税負担はゼロでも、配偶者が亡くなる二度目の相続では法定相続人が子のみとなり、基礎控除額は縮小します。
その結果、初回で節税できたはずの財産が一気に課税対象に入るケースが少なくありません。一次・二次の両方を試算したうえで、生命保険や生前贈与を活用して適切に財産を分けておくと将来の負担を抑えられます。
配偶者+(子→父母→兄弟姉妹)が法定相続人の基本で、
| 順位 | 相続人 | 代表例・補足 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 子・孫など(直系卑属) | 子が先に亡くなっていれば孫が代襲相続 |
| 第2順位 | 父母・祖父母(直系尊属) | 子がいない場合のみ登場 ※父母が健在なら祖父母に出番なし |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(代襲は“甥姪”まで) | 兄弟も亡くなっていれば甥姪が代襲相続 |
相続放棄をした人は 遺産を受け取らない ものの、“法定相続人としての人数” には 含める 点に注意が必要です。
法定相続人を数えるときは、まず「配偶者は常に相続人」と覚え、そのうえで
①子がいれば子と代襲する孫までを数え、
子がいなければ②父母(直系尊属)、
それもいなければ③兄弟姉妹と甥姪までを順番に数えます。
さらに見落としがちなケースとして、
| ケース | よくある誤解 | 正しい扱い | 重要ポイント |
|---|---|---|---|
| 養子 | 何人でも相続人にできる | 被相続人に実子がいるときは1人まで、いないときは2人までしか基礎控除計算に入らない | 養子が多いと控除額を過大計算しがち |
| 胎児 | 生まれていないので対象外 | 出生すれば相続開始時から相続人 | 出生前後で税額が変わる可能性 |
| 内縁・事実婚 | 長年パートナーなら配偶者扱い? | 日本法上法定配偶者に該当せず相続権なし | 相続権を確保するなら遺言・養子縁組が必要 |
| 前妻・前夫の子 | 今の家族だけで分ければ良い | 婚姻歴にかかわらず実子は平等に相続 | 隠れ相続人がいると分割協議が無効に |
| 相続放棄 | 放棄した人は人数から除外 | 放棄しても人数にカウント(基礎控除の枠は減らない) | 放棄後の再分割で税計算を誤る例が多い |
があります。これらの特殊ケースは、国税庁タックスアンサー でも「判断に迷うケースがある」と注意喚起されています。
