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高齢の親の財産を、子が管理するには

2026.4.3|相続税

日々の暮らしの中で、ふと直面する法律の問題。
相談者と、法律の専門家の会話から、対処方法についてご紹介します。


相談者

認知症になってからでは、もう手遅れなのでしょうか?


専門家

認知症になると、ご本人の判断能力が低下するため、不動産の売却や預金の解約、相続対策の契約などが原則としてできなくなります。たとえば名義変更や資産の整理を進めたくても、意思確認ができないと金融機関や役所の手続きが止まってしまう場面が現実に起こります。

この段階になると利用できるのは法定後見(家庭裁判所が後見人を選ぶ制度)に限られますが、後見人は裁判所が選任するため家族の希望が反映されにくく、後見人への報酬として月2〜5万円程度の継続費用が発生します。また資産の使い方にも制約がかかり、柔軟な相続対策は難しくなります。

一方で、家族信託(家族に財産管理を任せる契約)や任意後見契約(将来に備えて後見人を自分で決めておく契約)は、判断能力があるうちにしか結べません。準備できる期間は限られているため、早い段階で現状を整理し、どの方法が適しているか専門家と検討しておくことが重要です。


相談者

財産管理委任契約・家族信託・任意後見の3つは何が違うのですか?どれが一番いいですか?


専門家

財産管理委任契約(元気なうちから財産管理を任せる契約)は、今すぐ効力を持たせられる点が特徴です。判断能力がある間のサポートとして柔軟に使えますが、金融機関によっては対応に差があり、実務上は使いにくい場面もあります。契約自体は比較的シンプルで費用も抑えやすく、日常的な管理を任せたいケースに向いています。

家族信託(家族に財産を託して管理・承継する仕組み)は、契約後すぐに運用でき、資産の管理や承継まで一体で設計できる点が強みです。信託口口座を使うことで金融機関での実務も進めやすい反面、設計や契約書作成に専門性が必要で、初期費用や手続きの負担はやや大きくなります。資産規模が大きい方や将来の承継まで見据えたい家庭に適しています。

任意後見契約(将来判断能力が低下したときに備える契約)は、元気なうちに契約し、実際に判断能力が低下した後に効力が発生します。家庭裁判所の関与のもと運用されるため、金融機関での手続きは安定していますが、報酬や監督の仕組みがあり、自由度は制限されます。将来の備えを確実にしておきたい場合に選ばれます。

どの制度が最適かは、「今すぐ管理を任せたいのか」「将来に備えたいのか」「資産規模や家族構成はどうか」といった条件で大きく変わります。一つに優劣をつけるものではなく、それぞれの特徴を踏まえて組み合わせるケースも多いため、状況を整理したうえで設計することが重要です。


相談者

家族信託をしても、銀行によっては使えないことがあると聞きました。本当ですか?


専門家

その通りです。家族信託では、受託者が財産を管理するために「信託口口座(しんたくぐちこうざ)」という専用口座を使うのが一般的です。これは信託財産を他の個人資産と分けて管理するための口座です。

しかし、この信託口口座はすべての金融機関で開設できるわけではなく、対応の有無や条件は銀行ごとに異なります。未対応の金融機関では、名義変更や資金管理が実務上進められず、せっかく家族信託を組んでも運用が滞るリスクがあります。

たとえば相模原市周辺でも、横浜銀行やJAさがみなど、地域の主要金融機関ごとに対応状況や運用ルールが異なるため、事前確認が欠かせません。口座が開けるかどうかで、信託の実効性は大きく変わります。

そのため、どの金融機関を使うかの選定や事前の調整は、制度設計と一体で進める必要があります。契約内容だけでなく、実際に動かせる状態まで見据えて準備することが重要であり、この部分は専門家が関与すべき領域といえます。


相談者

親が施設に入ることになりました。入居費用の支払いに親の口座を使いたいのですが、どうすればいいですか?


専門家

施設入居の場面では、親御様の口座から入居一時金や月額費用を支払う必要が出てきますが、判断能力が低下していると銀行は代理人による引き出しや手続きを認めないことがあります。通帳やキャッシュカードが手元にあっても、名義人本人の意思確認ができないと、実務上は口座が使えなくなるケースが少なくありません。

判断能力がある段階であれば、家族信託(家族に財産管理を任せる仕組み)を活用することで、受託者であるご家族が信託口座から施設費用を支払えるようになり、現実的な運用が可能になります。施設入居が視野に入ってきた段階が、準備できる最後のタイミングになることも少なくありません。

すでに認知症が進んでいる場合は、法定後見(家庭裁判所が後見人を選任する制度)を利用する必要がありますが、申立てから開始まで時間がかかり、柔軟な資金運用は難しくなります。

何も準備がないまま入居を迎えると、口座が動かせず、施設費用の支払いが滞るという事態も現実に起こり得ます。状況に応じた手続きを早い段階で整理し、実際に支払いができる状態まで整えておくことが重要です。


相談者

家族信託で親のお金を管理していると、税務上で問題になることはありますか?


専門家

結論から言うと、問題になるケースとならないケースがあります。家族信託は仕組み自体が問題なのではなく、設計の内容によって税務上の扱いが大きく変わる点に注意が必要です。

基本的には、家族信託では受益者(利益を受ける人)が親のままであれば、その財産や収益は引き続き親に帰属すると考えられます。このため、適切に設計されていれば、単に管理を任せているだけであり、贈与税が発生することはありません。

ただし、受益者を子に変更してしまったり、実質的に財産を移転したと判断される内容になっている場合は、「贈与」とみなされ、思わぬ贈与税が課されるリスクがあります。契約書の一文や資金の流れが判断材料になるため、ここは特に注意が必要です。

また、相続が発生した場合には、信託している財産であっても相続税の申告対象に含まれます。「信託しているから相続税がかからない」というものではありません。

これらのリスクは、契約段階から税理士が関与し、税務上の位置づけを踏まえて設計することで回避できます。見た目の仕組みだけで判断せず、税務まで含めた全体設計が重要です。


相談者

税理士・司法書士・弁護士、誰に相談すればいいかわかりません。


専門家

まず役割の違いとして、税理士は税金の計算や申告、節税設計を担い、司法書士は契約書の作成や不動産の名義変更、信託登記などの法的手続きを担当します。弁護士は主にトラブルや紛争が発生した際の対応が専門です。それぞれ得意分野が明確に分かれています。

家族信託や財産管理の設計では、税務と法務の両方が密接に関わるため、税理士と司法書士の連携が欠かせません。契約内容が適切でも税務上の扱いを誤れば課税リスクが生じ、逆に税務を優先しすぎると契約や登記に不備が出る可能性があります。どちらか一方だけでは完結しない領域です。

相談先が分かれていると、「この部分は別の専門家へ」といったやり取りが繰り返され、時間や手間が増えるだけでなく、情報のズレによる設計ミスが起こることもあります。結果として、実務で使えない仕組みになってしまうケースも見られます。

そのため、最初から複数士業が連携し、窓口を一本化できる体制の事務所を選ぶことで、手続きの流れが整理され、全体として精度の高い設計につながります。どこに相談するかは、その後の進み方を大きく左右する最初の分岐点になります。

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(受付時間9:00~17:30)

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