1.親が認知症になった場合(柔軟な財産運用)
自分や家族のために財産の管理も活用も自由にできます。特に自宅の売却で効果を発揮します。
事例1 |
認知症になった母の自宅は、売却できないのですか?
希望①:認知症の心配がある母が将来施設に入ったら、母名義の自宅は売却したい
希望②:母に万が一のことがあったとき、預金が凍結されると医療費や税金の工面ができないので対策をとりたい
プロフィール |
相談者:遠藤 久子 |
年齢:60歳 |
家族構成:独り身で寝たきりの母と2人暮らし |
財産状況:母の自宅と預金を久子さんが管理 |
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親が認知症になった場合によくあるお悩み
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親の医療費や税金の支払いに困る
認知症になった親の財産は事実上凍結されます。暗証番号を知っているからといってATMから家族が引き出すのは本来してはいけないことですし、家族とはいえ銀行窓口での対面取引は原則として応じてもらえません。
どうしてもお金が必要な場合は、家族などが家庭裁判所に申し立てをして、成年後見人をつける必要があります。
成年後見人の申し立ては1ヶ月程度、もしくはそれ以上の時間がかかるため、親の医療費や税金を子が負担しなくてはならないケースがあります。
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親の自宅を自由に運用できない
認知症となった親の預金口座からお金を引き出す際、銀行は成年後見人か確かめてきます。
成年後見人は家庭裁判所が選んだ専門家になるケースが多いのと、成年後見人をつけても本人(親)のためにしか財産を使えないというルールがあるため、子が代わりに自宅を貸したり売ったりすることができません。
親の自宅を売るにも成年後見人や家庭裁判所の許可が必要です。
例えば、親が施設に入所する場合や、入院費用が必要で自宅を売却したい場合は認められる可能性があります。
しかし、もう住まないといった理由や、親に年金や預貯金などの資産が潤沢な状況で自宅を売却するのは厳しいでしょう。
また、親が収益不動産を所有していたとして、その収益不動産の建て替えや借地権の買い取り、新たな収益物件の購入や建設なども、親にとってメリットが少ないと判断され、認められません。
※成年後見人とは
認知症などで判断能力が不十分な人の代わりに手助けする人のこと。
例えば、不動産を貸したり売ったりするときや、財産のわけ方を決めるときなど、契約を結ぶ必要があるときに、代わりにハンコを押したり、財産を管理してあげたりします。
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解決策:「認知症になる前に信託契約を結ぶ」
【信託契約の内容】
・管理を託す財産(信託財産)は自宅と預金
・受託者は娘
・信託契約終了時の信託財産の帰属先は娘
効果:民事信託は柔軟な財産運用ができる
民事信託で親の財産を子どもに託しても、親が元気なうちは親が財産を自由に引き出して使えます。
さらに、親が認知症になっても成年後見人は不要で、管理する人がお金を引き出せます。
親が亡くなっても、信託されたお金は相続財産にならず、親の意思通り使ってもらうことが可能です。
もし管理する人の浪費が心配な場合は、生命保険信託や教育資金贈与の特例を使う選択肢もあります。
※任意後見制度でも解決できます
家庭裁判所に後見人を決めてもうらのではなく、自分で後見人を決める制度を任意後見制度と言います。
成年後見制度よりも柔軟性があります。任意後見制度では任意後見監督人(チェックする人)を付ける必要があり、任意後見人は監督人へ定期的に報告する義務があります。監督人に対して月々1~3万円の報酬を支払う必要がありますが、成年後見人への報酬よりも低いケースがほとんどです。売却の代理権があれば、任意後見人になった家族が家庭裁判所や監督人の同意無しに売却可能ですが、必要ないのに売却等をすると事後的に問題となるリスクがありますので注意しましょう。
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